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イグ・ノーベル賞で味覚が変わる?

2023年10月3日

10月に入り,ようやく涼しくなってきましたね。
しかしまだ暑い日もあり,油断ならない日々です。

昨年のブログでも記事にしましたが,この時期発表されるイグ・ノーベル賞,
毎年気にして見守っています。

※イグ・ノーベル賞
 1991年に創設された,「人々を笑わせ,そして考えさせてくれる研究」
 に与えられる賞で,"表のノーベル賞"に対して"裏ノーベル賞"とも言われています。
 日本の「カラオケ」や「たまごっち」,「バウリンガル」といった商品でも受賞。
 日本はイギリスと並び,受賞常連国で,
 創設者によれば,
 「多くの国が奇人・変人を蔑視するなかで,日本とイギリスは誇りにする風潮がある」
 という共通点があるのだとか……。
 
そして9月15日行われた,第33回のイグ・ノーベル賞受賞式。
受賞者の中には,今年も日本人メンバーが! 2007年から17年連続での日本人入賞となります。
「栄養学賞」として,明治大学の宮下芳明教授と東京大学の中村裕美特任准教授による,
“微弱な電流を流すストロー・箸・フォークによって飲食物の味を変える”実験が評価されました。

「明治大学 総合数理学部 宮下芳明教授らがイグ・ノーベル賞(栄養学)を受賞」
(明治大学HP)

この「電気味覚」の研究では,人体に影響しないごく微弱な電気を用いて,
塩味の基となる塩化ナトリウムやうま味の基となるグルタミン酸ナトリウムなどが持つイオンの働きを調整し,
疑似的に食品の味を濃くしたり薄くしたりすることで味の感じ方を変化させることを目指しているそうです。

今回受賞の論文は2011年に発表されたもので,その後キリンホールディングスとの共同研究により,
減塩食品の味の満足度を高める電気刺激波形と箸型デバイスの開発につながりました。
減塩の食生活を送る方々を対象にした臨床試験では,こちらの箸型デバイスを用いると,
薄味の減塩食を食べたときに感じる塩味が1.5倍程度に増強されることが確認されたそうです。


この電気刺激で味覚を操作するデバイス,商品化の段階にまで来ており,
授賞式では2023年中の発売を予定していることが発表されました。
「エレキソルト」と名付けられたこのデバイスは,スプーンとお椀があるようで。
「電気の力で、減塩食の塩味を約1.5倍に増強するスプーン・お椀を開発」
(キリンホールディングスHP)

このスプーン・お椀というラインナップは,キリンホールディングスの調査による,
減塩に取り組まれている方が「薄味ではなく濃い味で食べたいもの」の
ランキング結果に基づくものだとのこと。

結果では,1位が「ラーメン」,2位が「みそ汁」だそうです。
“減塩生活で控えている,ラーメンのような「ご褒美食」を本来の濃い味で食べたい…”
“日常的に食卓にのぼるけれど,塩気が薄いと物足りなく感じがちな「汁物」をおいしく食べたい…”
だからこそ,それらを盛ったり,口に運んだりできるスプーンとお椀なのですね。

通常の食器のように使うだけで,実際には塩分が薄めでも満足のいく味で食べられるとは,
健康管理のために減塩が必要な方々にとって,夢のような製品ではないでしょうか?


そのほか,宮下芳明教授が開発した味覚メディア技術では,
 「白ワインを赤ワインの味に変える」
 「カカオを異なる産地の(より高級な)味に変える」
 「毒キノコの味を安全に体験できるようにする」
 「甲殻アレルギーでも安全にカニの味を味わえるようにする」
 「口臭を起こさずにニンニクを味わう方法」
…などがあり,どれも不思議で驚かされます。

こうしてみると,イグ・ノーベル賞にとどまらない,社会的意義の大きな画期的研究ですね。
実際,今回の受賞だけでなく,発表後10年間多く引用され広くインパクトを与えた論文に与えられる
「Lasting Impact Award」も受賞しているとのこと。


来年はどんな研究が受賞するのか,今から楽しみです!

(す)
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