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イグ・ノーベル賞で虫よけ?

2025年10月21日

最近まで暑い日も多かったですが,ようやく秋が深まってきましたね。
急に肌寒くなり,慌てて暖かい服やグッズを用意して過ごしています。

昨年のブログでも記事にしましたが,この時期発表されるイグ・ノーベル賞,
毎年気にして見守っています。

※イグ・ノーベル賞
 1991年に創設された,「人々を笑わせ,そして考えさせてくれる研究」
 に与えられる賞で,"表のノーベル賞"に対して"裏ノーベル賞"とも言われています。
 日本の「カラオケ」や「たまごっち」,「バウリンガル」といった商品でも受賞。
 日本はイギリスと並び,受賞常連国で,
 創設者によれば,
 「多くの国が奇人・変人を蔑視するなかで,日本とイギリスは誇りにする風潮がある」
 という共通点があるのだとか……。
 
去る9月18日(日本時間19日),第35回のイグ・ノーベル賞受賞式が行われました。
受賞者の中には,今年も日本人メンバーが! 2007年から19年連続での日本人入賞となります。
「生物学賞」として,農業・食品産業技術総合研究機構の児嶋朋貴さんら,
愛知県農業総合試験場と京都大学の研究チームによる,
「黒いウシにシマウマ模様を付けて『シマウシ』にすると虫が寄り付きにくい」
ことの発見が評価されました。

「イグ・ノーベル賞「ウシにシマウマ模様塗ったら虫つかず」…児嶋朋貴さんら研究チーム「生物学賞」」

こちらの研究では,
“ウシにシマウマのような縞模様を描くことでアブに刺されるのを避けられるか”
を検証し,模様のないウシに比べ,吸血昆虫の付着数が減ることを明らかにしました。

白いスプレーでシマウマ模様を付けたウシ,黒いスプレーでしま模様を付けたウシ,
通常のウシの3頭を用意し,どのウシに虫が付きやすいかを調べたところ,
柵につないで30分後には,通常のウシには128匹,黒いしま模様のウシには111匹に
虫がついていたのに対し,シマウマ模様のウシは55匹と,なんと他の半分ほどだったそうです。
ウシが虫に刺されると,虫が媒介する伝染病への感染リスクが高まるほか,
痛みやかゆみでストレスをためて餌を食べる量や乳量が減り,成長が悪くなってしまうとのこと。
この深刻な悩みを,「ウシをペイントする」という負荷の少ない方法で解決できるとなれば,
一見面白いですが,画期的なすばらしい研究ですね。

医療分野でも抗菌薬の使用で起こる薬剤耐性菌の出現が問題になっていますが,
家畜や農作物等に対して使う殺虫剤でも同じことが起こっており,
現在ゴキブリやハエなどの耐性虫が増加してしまっているそうです。
環境への配慮という観点からも,殺虫剤を使わずに虫害を減らすこの優れた研究が実用化されれば,
私たちも牧場などに「シマウシ」がいる光景が見られるようになるかもしれませんね。

来年はどんな研究が受賞するのか,今から楽しみです!

(す)
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