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世界初で新薬で歯科用薬で

2016年12月1日

11月末にまさかの雪が降り,フライングの感もありますが,今日から12月。本格的に冬ですね。

厚労省によるとすでにインフルエンザの流行シーズンに入ったとのこと。
例年より早いようで,あわてて予防に力を入れ始めた方も多いのではないでしょうか。


さて,先月の11月18日,今年最後となる新薬たちが薬価収載されました。
中でも今回,個人的に最も気になった品目。それは……

リグロス歯科用液キット600μg・同キット1200μg です。
有効成分は「トラフェルミン(遺伝子組換え)」,製造販売は科研製薬(株)です。
こちらの適応は,「歯周炎による歯槽骨の欠損」。
歯肉剥離掻爬手術時に歯槽骨欠損部を満たす量を塗布して使用するようです。

歯肉剥離掻爬手術(「フラップ手術」とも)とは】
歯周炎の病態が進んだときに行う外科的治療法の1つです。
メスで歯肉(歯ぐき)を切開することにより,歯肉を歯槽骨から剥離し,
歯根および歯槽骨を露出させます。
露出後,プラークや歯石,及び炎症によりダメージを受けた歯肉などの組織を
取り除いたのちに,剥離した歯肉を元の状態に戻し縫合します。

科研製薬HP ニュースリリースより
(画像は協会けんぽHP「健康サポート」よりお借りしました)

この手術で歯周組織の再生をはかってくれるのが「リグロス歯科用液キット」です。
そういった医薬品はこれまでになく,なんと『世界初の歯周組織再生医薬品』とのこと。


しかし,こちらの成分の「トラフェルミン(遺伝子組換え)」,前から知ってる……!
という医療関係者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そう,トラフェルミン(遺伝子組換え)は,
褥瘡・皮膚潰瘍治療剤である「フィブラストスプレー250・同スプレー500」の成分でもあります。

創傷治癒に関わる細胞に働きかけ,組織の修復を促すという作用は同様に,
今回新たに製剤的工夫などによって歯周組織の再生に役立つ製剤が生まれたのですね!
当面は大学病院等,歯周治療を専門とする医療施設での使用となるようですが,
歯周炎の患者さんにとっては心強い味方になるはずです。

そしてこの製品,珍しく『歯科用薬で新薬』なのです。
薬価収載品としては,2002年に収載された「スキャンドネストカートリッジ3%」以来,
約14年振りの新規の歯科用薬ではないか?という説も。
(※独自調査のため,もしかしたら他にあるかもしれません。あしからず……)


いつにも増して歯科用薬に敏感になってしまう,現在歯医者通いの日々を送る私でした。

(す)
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