医情研通信 Column & Blog

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こんなところでも格差社会

2019年7月23日

今月17日に,乳がんについてのメディアセミナーに参加しました。
(再発・転移乳がんと診断されたら―
患者・医師・看護師によるパネルディスカッションで考える
「がん治療と共に自分らしく生きること」主催:日本イーライリリー株式会社)

いまや5年生存率が9割を超える乳がんですが,
乳がんは10年後に再発,ということも珍しくなく,
また,再発すると治りにくい,というイメージを持っていました。

しかし近年,乳がんは抗がん剤,ホルモン療法,分子標的薬と
さまざまな薬物療法が可能となり,再発後も約5割の方で
1年以上の長期生存が可能
となっているとのこと。
実際,セミナーには2005年に発病,
その2年後に他臓器への転移がわかったものの,今も元気に
お仕事やがん患者さんのための活動をされている方が登壇されました。

また,抗がん剤には激しい嘔吐・吐き気のイメージがありますが,
それももはやひと昔前の話
いまは制吐剤の登場によりかなり防げるようになっているとのことで,
女性のがん患者さんには古いイメージゆえに
抗がん剤を拒否する方もいらっしゃるそうですので,
これは医療者からも,メディアからも
大いに発信していただきたいところです。

・・・と,ここまでは,わぁ,医療の進歩ってすごいんだなあ~,
なんて単純に喜べる話だったのですが。

登壇されたがん研究会有明病院・乳腺センター長の大野真司氏によると,
大企業はがんを発病した社員に対するサポートが手厚いと感じるものの,
乳がん患者さんの多い40代後半から60代の女性は中小企業の社員の方,
非正規雇用やパートの方が多い
と感じるとのこと。
つまり職場からのサポートが受けられないだけでなく,
病気を機に仕事を続けられなくなる人が多いのです。

また,使える薬は増えたのですが,やはり新しい,
治療効果の高い薬を使うとなると,当然治療費は上がります

昨今は非正規で働く“おひとりさま”,
非正規ながらその収入で一家の家計を支えている,という方も多く,
「お金がないからあきらめます」「お金がたまったら治療します」
と言う方もいらっしゃるとのことで,
ベストな治療法があるとわかっていながらも,
お金が要因で受けられる治療が限られてしまう

という現状があるようです。

医療の進歩は,皆保険制度の日本にあっても
格差も生んでしまっているのだなあ

と,なんとも暗い気持ちになりました。

ところで,がん治療時に患者さんや家族が利用できる
「公的な支援制度」や「民間の支援サービス」を検索できる

WEBサービス「がん制度ドック®」をご存じでしょうか。
がん患者さんの中には受けられる支援がわからない,という方も多いようです。
がんが見つかったという方が身近にいらしたら,
よくわからないキノコや水やつぼを勧めるのではなく,
「こんなサイトがあるみたいよー」と教えてあげてください。
もちろん,無料です。

(梅)
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