医情研通信 Column & Blog

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けったいな町医者

2021年3月30日

兵庫イチの“ディープタウン”,尼崎市で在宅での看取りに取り組んでおられる
長尾和宏先生のドキュメンタリー映画「けったいな町医者」を観てきました。

どんなジャンルであれ,ドキュメンタリー映画は上映期間が短いのが当たり前。
急げとばかりに公開翌日に観に行ったのですが,
ひと月が過ぎたいまも,一日一回とはいえ
銀座のど真ん中の映画館で上映されています。

そりゃそうでしょう。とにかく面白いんですから。

詳細は映画を観ていただくとして,
それにしてもよくまああれだけの患者さん,ご家族が
撮影と公開を許可してくれたなあと思います。
患者さんやご家族と長尾先生の信頼関係はもちろんのこと,
在宅医療・在宅での看取りについてもっと知ってほしい,
もっと多くの人に広げたいという長尾先生の思いを
みなさんが理解されているからこそ,でしょう。

大好きだった奥さんが遺した下着を身に着け,
家族が気付かぬうちに自宅で息を引き取った高齢男性の,
亡くなった直後の下着以外何も身に着けていない姿が映し出されるシーンもありました。

死ぬ間際に身体がひどく発熱することがあるということなので,
最後の力を振り絞って着ていたものを脱ぎ捨てただけのことだったのかもしれませんが,
大好きな奥さんとの思い出が詰まった自宅で,
大好きな奥さんが遺した下着だけを身に着けて死んでいく。
それはそれですてきではないですか。
こんな死に方ができるほどに在宅は自由,ということかとも思います。
ご家族も淡々としたもので,長尾先生と「よかったなあと思って」,
なんて言っていたのが印象的でした。
家だろうが病院だろうが,本人の希望が叶い,
家族が納得できるのがなにより
です。

かつてあるお医者様から,医者と弁護士の友達がいれば安心だよ,
と言われたことがあります。
友達になれるかはともかく,
長尾先生のような“町のお医者さん”が地元にいてくれたら
さぞや安心だろうと思います。

映画を通して考えさせられるのは,
生きること,死ぬことの多様さとままならなさ,
そのなかで人を診るということはどういうことか,
ということ。
そういう意味では,医療者の方にもぜひ観てほしい映画です。

長尾先生の本が原作となった公開中の映画「痛くない死に方」と併せて
おススメです!


(梅)
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