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Keep alive!

2019年4月23日

東京で開催中のザ・ローリング・ストーンズ展に行ってきました。
(TOC五反田メッセ・5月6日まで)
メンバー愛用の楽器が多数展示されていたり、
録音スタジオを再現したスペースがあったりと、
今年デビュー55年を迎える現役の“バンドとしてのストーンズ”
前面に出した展覧会でした。

一昨年に開催されたデヴィッド・ボウイ展では、
かつてボウイが薬物中毒だった頃に愛用していた、
コカイン摂取用の耳かきのような
小さなスプーン
なども展示されていましたが、
ボウイ以上にどっぷり薬に浸かっていたストーンズの一部メンバーの、
そういった面は今回の展覧会では一切触れられておらず、
とても健康的でクリーンな印象でした。

それにしてもかねがね思うのは、
過去にあれだけ薬を乱用していながら、
70歳を過ぎても元気にヨーロッパツアーだの
北米ツアーだのができるというのは、
一体どういうことなのでしょう。

(ボーカルのミック・ジャガーは先日心臓手術を受けましたが、
年内にもツアーに出ることが検討されているようです)

かつて、特に1960年代から70年代にかけて、
多くのミュージシャンが薬物で命を落としました。
でも、そこをくぐり抜けた人たち
(ポール・マッカートニーとかエリック・クラプトンとか)は、
異様に元気です。前者と後者で何が違っていたのでしょうか?

ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズの自伝によると、
薬物にどっぶり浸かっていた頃、1日の始まりにまずしていたことは、
その日使う薬を選んで摂取する順番を決め、
それぞれの摂取量を厳密に計算すること
だったそうです。

ストーンズ展でもライブの予定や感想がびっしり書き込まれた、
キースの若い頃の日記帳が展示されていましたが、
こういうところでもその几帳面さが発揮されていたのですね。
↑展示されていたキース・リチャーズの1963年の日記
(実物はとても小さい)
と、感心している場合ではありません。
日本でも昨年、大麻所持の容疑で高校生が逮捕されるなど、
薬物乱用の広がりが問題となっています。

その後、薬からすっかり足を洗ったキースは、
来日した際のインタビューで
薬物を乱用する若者にメッセージを求められ、
ひと言「Keep alive!」(生き延びろ!)と答えました。

別のインタビューでは、
自分がこれだと信じたものは、何があっても絶対に手を離すな、
と語ったこともありました。

生き延びるためにやるべきことは何か、
手に握りしめておくべきものは何か。
薬物依存からの離脱はそんな甘っちょろいもんじゃないよ、
と言われそうですが、どん底から這い上がるのに必要なものって、
案外そんなものではないかと思います。

というわけで、
今、薬物依存と闘っているあの人に、
Keep alive!


(梅)
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