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大腸内視鏡でトガった研究

2018年9月20日

9月も残すところ10日。ずいぶん涼しくなってきましたね。

新型iPhoneの公式発表など,ビッグニュースが多いこの頃ですが,
毎年この時期に発表される賞といえば…?

そう,「イグ・ノーベル賞」です。
1991年に創設された,「人々を笑わせ,そして考えさせてくれる研究」
に与えられる賞で,"表のノーベル賞"に対して"裏ノーベル賞"とも言われています。
日本の「カラオケ」や「たまごっち」,「バウリンガル」といった商品で受賞したことも
話題になりましたよね。
日本はイギリスと並び,受賞常連国なのです。
創設者によれば,
「多くの国が奇人・変人を蔑視するなかで,日本とイギリスは誇りにする風潮がある」
という共通点があるのだとか……。


今年の授賞式は,日本時間の9月14日。
12年連続の日本人受賞,なるか!?
ということで見守っていたところ,見事,今年も受賞者が!
堀内朗先生(昭和伊南総合病院・内科診療部長兼消化器病センター長)が医学教育賞を受賞されました!
受賞研究は,「座位で行う大腸内視鏡検査」。
つまり,通常は横になった患者の肛門に内視鏡を入れるこの検査ですが,
座った姿勢で肛門に内視鏡の管を入れていけば,痛みも少なく容易に検査できる,
と自ら「セルフ内視鏡」を行った体験から示された…とのことです。
(画像はロイターよりお借りしました)

実験とはいえ,自分で自分の大腸を検査してみようとは,
たとえ思いつく医療関係者の方はいても,なかなか実行に移せるものではないような気が……。
ですが,朝日新聞デジタルの記事
大腸検査をもっと気軽に イグ・ノーベル賞を受けた医師
大腸検査,座れば楽に 自分で試してイグ・ノーベル賞

によれば,堀内先生の体を張ったこの研究は,
“地域から大腸がんをなくしたい”
“少しでも多くの方に気軽に検査を受けてほしい”
との思いからだそうです。
そのために,この研究以外にも数多く患者の負担を減らす検査方法を模索してこられ,
結果的に今回の受賞につながったと語っていらっしゃいます。

堀内先生によれば,内視鏡検査で見つかった大腸ポリープを切除すれば,
大腸がんの発症を9割抑えられるとのこと。
そのため,勤務する病院では,覚めやすい鎮静剤を用いるなどの工夫で,
検査が日帰りでより手軽になるよう取り組みをされており,
検査数が地方の病院としては異例の年1万5千人に達するそうです。

ただ現状は,座った姿勢で医師に内視鏡を入れられることに対し,
恥ずかしがる患者が多く,実際の現場での採用はされていないとのこと……。
でも,この有意義な研究が生かされる日がきっと来るはずです!


なお,2018年9月22日(土)~11月4日(日)までは,
イグ・ノーベル賞の世界展
が東京ドームシティ内で開催されます。
受賞研究の紹介や実物展示もあり,これまでの賞の軌跡を体験できるとのこと。
笑った後で考えさせられる「トガった研究」の世界に足を踏み入れてみては?

(す)
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